家族信託と同等に、判断能力がある内に契約して、財産の保護を信頼できる人に託すという方法の一つに任意後見制度があります。
任意後見とは、十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した時に備えて、信頼できる人(「任意後見人」といいます)に、財産管理等を任せるということを契約することにより定めておくものです。
この契約書は、公証役場で公正証書にしないと効力が発生しません。
実際に判断能力が衰えてきた場合には、任意後見契約で任意後見人になった方が家庭裁判所に申し立てをします。
そして、家庭裁判所が任意後見監督人(任意後見人がきちんと仕事をしているかを監督する立場の人を言います)が選任された段階で任意後見が開始されます。
任意後見は法定後見と異なり、医師による診察や鑑定が必要ないので、手続きは法定後見よりは早く済みます。
しかし、任意後見を開始するタイミングを見計らうのが難しいところが難点です。
契約により自分の希望する任意後見人を指定できるため、法定後見と異なり、自分の希望する人が確実に任意後見人になれます。
任意後見人が就任するまでの時間が、法定後見人の場合と違って時間がかかりません。
法定後見は法定後見人に対する報酬額は家庭裁判所が決めますが、任意後見は報酬額を自由に決めることができます。
法定後見と異なり、任意後見は本人が行った契約等(法律行為と言います)を取り消すことができません。
任意後見契約を公正証書にするための手間がかかります。
参考までに最近の傾向として、被後見人の財産がそこそこある場合は、希望する人が後見人に就任する例が少なくなっており、行政書士、司法書士、弁護士などの士業を営む方が家庭裁判所から後見人(後見監督人が必要な場合は後見監督人も)に指名される例が多くなっています。
また、後見監督人が必要な場合は後見監督人も行政書士、司法書士、弁護士などの士業を営む方が家庭裁判所から指名される例が多くなっています。
このように同じ成年後見制度でも法定後見とこの任意後見ではかなり性質が異なります。
ポイントは「判断能力があるか、ないか」です。
判断能力があるうちに対策をしようとすれば、遺言、任意後見、家族信託と3つの選択肢の中から選ぶことができます。
しかし、判断能力が失われた場合は法定後見しか選ぶことができないのです。
先延ばしにせず、早いうちに親族間で話し合うことがとても重要になります。
今までの日本の風土では、このような話をするのはご法度だというものがありましたが、時代が変わったのです。
このような話し合いは積極的にしなくてはならない時代になったのです。
お正月でもお盆でもいいです。親族が集まる場でこのような話を一度してみてはいかがでしょうか?